シリーズ「仕事の5大プロトコル」も、いよいよ最終回です。最後のテーマは「改善」。これまでの4つ(思考・品質・伝達・報告)を支える、いわば土台のような考え方になります。
ひとことで言えば、「いつも通り」を疑うということ。地味に聞こえるかもしれませんが、半年後・1年後に大きな差を生むのは、実はこの習慣です。
第4弾の「報告」編もあわせてどうぞ。
「大変だな」の次に、何を考えるか
たとえば、毎月くり返す少し面倒な作業があったとします。ここでの分岐が、半年後の差になります。
BEFORE ✕
またあの作業か……面倒だな
(でも仕方ない)
まぁ、やるしかないか
思考停止のまま手を動かす
AFTER ○
またあの作業か……面倒だな
何か良いやり方ないかな?
調べた方法で、時間が半分になった!
立ち止まって、調べる・試す
「面倒だな」と思うこと自体は、悪いことでも何でもありません。誰もが感じます。問題は、そのあとです。
「やるしかない」とそのまま進む人と、「もっと良い方法はないか?」と一度だけ調べてみる人。この小さな差が、半年後には驚くほど大きな差になります。

IT業界では、この「面倒だと思ったら仕組みを変える」という発想が、そのまま仕事の中身になります。効率化に興味がある人は、それだけで向いていると言えます。
こんな場面、心当たりありませんか?
改善でつまずくパターンを、対処法とセットで整理します。左が「あるある」、右が「今日からこうしよう」です。
| ✕ こんなこと、ありませんか? | ○ 今日から、こうしよう |
|---|---|
| 同じ作業を毎週・毎月、同じ時間をかけて繰り返す | 『また同じ?』で立ち止まる 2回目以降の作業は、5分だけ調べる時間を作る |
| 「面倒だな」と思いつつ、そのまま手を動かす | 定型作業はテンプレ化 メール文・資料・チェックリストを使い回せる形に |
| 便利なツールや機能の存在を、知らないまま過ごす | 人のやり方を見る・聞く 「それどうやってるんですか」と聞くだけでいい |
| 他の人がもっと速くやっていることに気づかない | 週に1回だけ振り返る 「今週、もっと速くできた作業は?」を自分にメモする |
特に後半のふたつは、自分では気づきようがないのが厄介です。「これが普通」と思い込んでいると、もっと良い方法があることにすら気づけません。
だからこそ、人に聞くのが一番早いのです。「それ、どうやってるんですか?」の一言は、改善の最短ルートです。
今日から意識したい3つのアクション
①「また同じ?」で立ち止まる
2回目以降の作業は、いきなり手を動かさず、5分だけ「もっと良い方法はないか」と調べる時間をつくる。たった5分の投資が、その後の何時間も節約してくれることがあります。
逆に言えば、1回しかやらない作業は、改善しなくていいということです。判断基準は「これ、また来るな」と思ったかどうかだけです。
②定型作業はテンプレ化する
よく使うメール文、資料、チェックリストは、毎回ゼロから作らず、使い回せる形にしておく。これだけで作業時間がぐっと減ります。
ただし、ここで注意点があります。テンプレートを使うときは、「品質」編でお話しした確認を必ず入れてください。流用は効率的ですが、中身を確認しないまま出すと、かえって信頼を落とします。
③週に1回だけ振り返る
「今週、もっと速くできた作業はなかったかな?」と、自分にメモする習慣をつける。振り返りがあるからこそ、改善のネタが見つかります。
毎日やろうとすると続きません。週に1回、5分だけで十分です。

改善は「頑張ること」ではなく「楽をするための工夫」です。
面倒くさがりな人ほど向いている、と言ってもいいかもしれません。
「いつも通り」を疑える人だけが、速くなれる
改善の本質は、新しいツールを覚えることでも、特別な才能でもありません。「いつも通り」を一度疑ってみる、その姿勢にあります。
「これ、もっと良いやり方ないかな?」と問い続ける人は、少しずつ速く、上手になっていきます。逆に「これが普通」と思考を止めてしまうと、いつまでも同じところにとどまってしまいます。
就活そのものも「改善」できる
ここで、就活生のみなさんに一番お伝えしたいことがあります。就活は、改善が最も効く場面です。
選考は何社も受けます。つまり、同じことを何度も繰り返す作業です。ここに改善を入れないのは、あまりにもったいない。
| 改善できる場面 | 具体的なやり方 |
|---|---|
| ESの作成 | 共通で使える部分(ガクチカ・自己PR)をテンプレ化し、企業別の部分だけ書き換える |
| 面接の振り返り | 終わった直後に「聞かれた質問」「詰まった質問」をメモする |
| 答えられなかった質問 | 次の面接までに必ず答えを準備する。同じ質問で2回詰まらない |
| 企業研究 | 調べる項目を決めておく(事業・顧客・体制・研修など) |
特に効くのが「面接の振り返り」です。面接が終わった直後、駅までの道でスマホにメモするだけでいい。聞かれた質問と、うまく答えられなかった質問を残しておく。
これを3社続けると、よく聞かれる質問のパターンが自分の中に蓄積されます。同じ質問で2回詰まらなくなれば、選考を受けるたびに確実に強くなっていきます。
面接では「改善」がこう問われる
改善への意識は、面接でも次のような質問で確かめられています。
- これまでに何かを改善した経験はありますか
- アルバイトで工夫したことを教えてください
- 非効率だと感じたことに、どう対応しましたか
IT企業の面接では、この質問の重みが特に大きくなります。システム開発の仕事は、そもそも「業務を効率化する仕事」だからです。改善の経験を語れる人は、それだけで適性を示せます。
回答例文
💬 「改善した経験」への回答例
「塾講師のアルバイトで、授業準備の手順を見直した経験です。担当していた小学生向けの補習では、毎回その日の生徒の理解度に合わせてプリントを手作りしており、1コマあたり40分ほどかかっていました。3回目の準備をしているときに『毎回ゼロから作る必要があるのか』と疑問を持ち、単元ごとに難易度を3段階に分けた問題セットをあらかじめ作りためる形に変えました。結果、準備時間は10分程度まで短縮でき、余った時間を生徒ごとの記録の見直しに使えるようになりました。他の講師にも共有し、共通のフォルダで管理する形になりました。面倒だと感じたときに、その作業自体を疑ってみることを意識しています」
この回答のポイントは3つです。
- 気づいたきっかけが具体的(3回目の準備のとき)
- 効果を数字で示している(40分→10分)
- 自分だけで終わらせず、周囲に広げている
特に3つ目は、面接官が意外と重視する部分です。改善を個人の工夫で止めず、チームの資産にできる人は、組織の中で価値を発揮しやすいためです。
おわりに ── 5つの積み重ねが、信頼になる
ここまで5回にわたって、「思考」「品質」「伝達」「報告」「改善」という5つのテーマをお届けしてきました。最後に、全体を振り返っておきます。
| # | テーマ | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 01 | 思考 | 指示を「タスク」ではなく「目的」で受け取る |
| 02 | 品質 | 自分の名前で出せる状態で渡す |
| 03 | 伝達 | 結論ファースト、修飾語は後ろ |
| 04 | 報告 | 聞かれる前に、自分から出す |
| 05 | 改善 | 「いつも通り」を疑う(本記事) |
どれも、特別な才能や難しいスキルの話ではありませんでした。目的を確認する。自分の名前で出せる状態にする。結論から伝える。聞かれる前に報告する。いつも通りを疑う。どれも、その気になれば今日からできる小さな選択です。
そして、仕事の質というのは、まさにこの毎日の小さな選択でしか変わりません。一つひとつの判断、一つひとつの言葉、一つひとつの確認。その積み重ねが、いつか「あの人に任せたい」という信頼になっていきます。
就活中のみなさんは、まだ社会に出る前です。でも、ここで紹介した考え方は、面接でも、グループワークでも、日々のやり取りでも、今すぐに役立つものばかりです。
働き始めてからではなく、今から少しずつ。そう意識できる人は、きっと一歩先のスタートを切れるはずです。

この5箇条は、実は私たち役職者も最初からできていたわけではありません。痛い目を見て、少しずつ身につけたものです。だからこそ、これを社会に出る前に知っているだけで、十分に一歩先を行けます。全部を完璧にやろうとせず、まずは一つ、意識してみてください。
5回にわたってお読みいただき、ありがとうございました。みなさんの就職活動が、納得のいく形で実を結ぶことを願っています。


